銀河英雄伝説原作1・2巻感想
昨年中には読み終わっていたのですが。
以下かなりネタバレです。
正直、1巻は登場人物の顔見せに終始してしまった印象で、あまりおもしろく感じられませんでした。
ヤンとラインハルトの戦術もそんなに目新しく思えなかったです。
こういう、戦争ものというのか、戦略が要素になる作品は、
以降、見当ちがい、浅はかな点はご容赦を。
ヤンやラインハルトがすぐれた策を提案しても、その実行過程があまり描かれないのがもの足りない原因なのかと。
モブキャラの描写が少ない。
従来の理論からは奇抜とされる策でも、案外首脳陣は納得してさくさく実行に移される。
もちろん数万人の命がかかる戦いで一か八かの博打策なんて打てないのが現実でしょう。
でもこの作品はフィクションです。
一冊のうち一回ぐらいは手に汗にぎる展開もほしかったなと。
ましてやシリーズ一作目、つかみどころが必要でしょう!
もうひとつ、どうしても古さがぬぐえない。
書かれたのがもう30年前ですから仕方ないとはいえ、舞台が未来なのでギャップを感じます。
とくに女性の活躍の少なさが気になって。
トリューニヒトの演説は「父であり息子であった」と、兵士は男性しかいないようで。
「女性も重要な兵力である」との説明もありましたが、オペレーターや補給の後方支援の前提。
肉弾戦はほとんどないのですから女性兵士の活躍も十分ありえますよね。
女性幹部がいても良いところ。
1巻の感想は正直なところ、「オッサンのための物語なのね」
フレデリカは1巻の時点では優秀であることはわかっても活躍らしいものはあんまり。
ジェシカが政治家となったときは、知己でありながらヤンと政治的に対立したりする展開を期待したりもしたのですが。
(ただし、主人公が淡い想いを抱いていたであろう人物があっさり死んでしまう展開はもちろん胸にきました)
(もう少し活躍してからでもよかったと思いますが、登場人物みなあっさり死んでいくのが田中芳樹先生の作風なようで)
技術的な面での古さも致し方ないとはいえ、紙の書類があふれるさまは20世紀っぽいです。
フジリュー版でミューゼル家の二層式洗濯機が話題になりましたが、
2016年の今読むと原作でもそれぐらいの技術のギャップがみられるので、誇張しているとはいえただのギャグとはいえない気がします。
そもそも帝国自体、技術の進んだはるか未来でありながら中世の王政と貴族社会が復権しているという、ギャップがありますから。
ここまでが1巻だけでなく全体的な印象。
といったように、正直あまり楽しめずに読み進めていたのですが、ヤンのこのセリフで大興奮。
吾々がつぎの世代になにか遺産を託さなくてはならないとするなら、やはり平和がいちばんだ。そして前の世代から手わたされた平和を維持するのは、つぎの世代の責任だ。それぞれの世代が、のちの世代への責任を忘れないでいれば、結果として長期間の平和がたもてるだろう。ヤンだけでなく、ラインハルトが作戦に優美さを求めるなど、キャラクターには封神への影響がよく見られます。
ヤンだけでなく、ラインハルトが作戦に優美さを求めるなど、キャラクターには封神への影響がよく見られます。
2巻はおもしろかった!
帝国VS同盟に終わってしまった1巻とちがい、それぞれの内紛が同時進行しながらときに利用しあい、登場人物たちもどんどん個性が出てきて。
これぐらい事態が入り組んでいるほうが読みごたえがあります。
信頼する副官の親が敵に回るなんて素晴らしく鬼畜。
3巻から先が楽しみだなーと思いながら読んでいたら
キルヒアイスが!!!
田中先生の評判から死ぬだろうとは思っていましたが、こんなに早いとは。
フジリュー版を先に読んでいたのでふたりの友情の尊さは知っていましたが、原作本伝ではまだそんなに活躍していないのにとも思いました。
原作本伝だけ読んだ人にふたりの結びつきの堅さは伝わるのでしょうか。
フジリュー版1話のエピソードは回想で語られてはいるとはいえ。
以上のように、物語にはまだ入りこめていません。
しかしキャラクターはとても魅力的です。
ヤン、ラインハルトの両雄だけでなく両陣営の幹部から脇役に至るまで今後が気になって仕方ありません。
3巻以降も各キャラクターがどうなるのかと戦争の行く末を見守りたいです